ドキュメンタリー番組の音声業務

ドキュメンタリー番組の音声業務

こんにちは。制作技術本部 札幌支社グループ・音声の花田です。
現在、札幌テレビ(STV)報道部に配属されています。

このたび初めてNNNドキュメントの撮影に携わりましたので、この場をお借りして紹介させていただきます。

【アイヌは狩人 ~守り続けたい誇り】昨年11月5日放送(札幌テレビ制作)

放送の日時はとうに過ぎてしまいましたが、2022年より取材していたアイヌ民族の"猟師"と"漁師"のお2人に焦点を当て、
それぞれSTVのローカルニュースでオンエアーしたものを基に、追撮したものを加えて再編集しています。
舞台は道内の2か所で、平取町の山に生きる猟師の男性、浦幌町の川での伝統的なサケ猟を目指す漁師の男性と、それぞれお2人の生き様とご家族との生活を撮影しました。
以下、ドキュメンタリー初挑戦の音声技術の目線になってしまいますが、気が付いたことを記したいと思います。

今回、山でのシカ猟のシーン、漁船の上での漁のシーンともに、装備による動作の妨げとなるという理由で、ピンマイクを付けずに撮影を行いました。
ほとんどのシーンをガンマイクで、何気ない日常の中の表情や仕草・声を狙い、シーンによってはあたかもその場にカメラクルーがいないかのように、遠目から広い画角で撮影するなどしました。

特に秋シャケを捌くシーンでは、完全にこちらに背を向けた親子のやりとりを、10m以上後ろからガンマイクで狙うことになりました。
当時を振り返ると、このシーンが始まるのを予見して先回りし、親子の正面側、カメラに見切れない位置にマイクを仕込むことが出来ていれば、より明瞭な音が拾えたのではとも思います。
ただ、ピンマイクではどうしても相手から近い音のみになってしまい、相手を遠い位置から撮影しているにも関わらず不自然な聞こえ方をしてしまいます。
ディレクターからも、「特にこのシーンでは自然な雰囲気での音が欲しい。質よりも内容として重要な声が拾えているかどうかが大事だから」と言われ、正直安堵しつつも、まだまだ撮影中の技術や動きに改善の余地があると感じました。

インタビュー時以外のインサートカット撮影時でも、積極的にガンマイクで音を入れるようにしました。
山の中での撮影時に近くに小川が流れていれば、川面までマイクを近づけて、カメラマイクの音とは違う川のせせらぎの音を拾いました。
また、家の食事シーンから、屋外へとシーンが替わるインサートカット撮影時には、
交差点の音響式信号機のスピーカーへマイクを向け、穏やかな親子の会話の雰囲気から、街中の忙しない雰囲気に切り替わるのがより伝わればと思い、音を拾ってみました。
カメラの映像が視聴者に一番効果的に伝わるのは確かですが、シーンが切り替わる際に異なる印象的な音が加わると、場面転換がより明確に伝わるのではないかと思います。
シーンに合わせてどんな音を狙うか音声マン自身で考え、それがディレクターの意図と合う音だった時は嬉しいものです。


私は今回、初めてアイヌの伝統文化に関わらせていただいたので、取材前からとても緊張しておりました。
シカ猟について行く時も、サケ漁の漁船に乗せていただく時も、邪魔にならないよう気を遣いながら、機材を守りながらも音を拾うことは緊張の連続でした。

しかし同時に今回登場された方々、関わってくださった方々皆さんに何度も助けられ、
無事に撮影を終えることができました。
下記にSTVニュースのリンク先を記入してございます。もし興味がおありでしたら是非ご覧ください。

※リンク 「狩猟民族として生きる」自然の恵みに感謝 アイヌの伝統文化を次世代へ - YouTube 「森で生きる」狩猟生活の伝統と誇りを胸に アイヌ文化を伝承する男性ハンター - YouTube 100年以上も置き去り 伝統的なサケ漁が禁止 アイヌの誇りを取り戻したい - YouTube
Text by
制作技術本部
札幌支社グループ花田 聡一郎